簡単な自己紹介をお願い致します。
NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス設立メンバーの田村亜紀子です。
NPO法人チャイルド・ケモ・ハウスは2006年に設立しました。
当時、小児がんの子どもをもつ親、医師、看護師、院内学級の先生、まちづくりの専門家、建築家等が「がんになっても笑顔で育つ!」をスローガンに掲げ、
小児がんの子どもと家族の生活の質に配慮した施設建設を目標に、寄付集めや啓発イベントなどを開始しました。
その後、2012年公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金を設立し、たくさんの方々のご協力のおかげで2013年、
神戸ポートアイランドの医療産業都市に小児がんや難病の子どもと家族の滞在施設「チャイルド・ケモ・ハウス」が完成しました。
現在、近隣の兵庫こども病院や陽子線センターなどの医療施設に全国各地から難病の子どもたちが治療を受けに来ており、
当施設は家族の滞在と日常生活をサポートしています。
設立に至った経緯や、関わるようになったきっかけを教えてください。
2002年、当時2歳だった息子が小児がんになったことが活動を始めたきっかけです。
8歳で他界するまで最先端の医療と病院関係者の温かいサポートに恵まれていたと感じています。
ただ、入院生活中は我慢させないといけないことも多く、特に遠方から病院に来られているご家族や、兄弟がいるご家庭は家族がバラバラの生活が長期に渡りつづきます。
「治療以外のことで子どもに我慢させることがないように…病気になってもあたりまえの家族の日常が1日でも多く過ごせるように…」
そんな想いで、治療中でも家族みんなが一緒に家のように過ごせて、すぐそばに医療者がいる「家と病院の中間施設の設立」を目指して活動をはじめました。
実際に設立・携わってみて環境や周り、気持ちの変化などを教えてください。
私が息子と大阪で入院生活をしていた時も、遠方から病院に来られる方はいたのですが、現在この神戸の医療産業都市に来られるお子さんは、
北は北海道、南は鹿児島からと、想像以上に全国各地から集まって来られています。ご両親はまだ30代のことも多く、経済的に大きな負担がかかっています。
その理由として
・子どもが病気になってから残業ができなかったり長期休暇をとっている
・お母さんはパートを辞めた
・遠方から治療を受けに来る交通費がかかる。
・家と病院の二重生活になり、生活費が二重にかかる。
などがあげられます。
当初、当施設の滞在費を1泊2000円では安いという意見が出ましたが、
現在は上記のような理由から一泊一律1000円としました。
できるだけ、治療中にかかる費用を少なくできるようなサポートが必要だと感じています。
活動を行っていく中で、課題、壁などを教えてください。
小児がんなど難病の治療のためには、高度医療を提供できる医療関係者や設備などが必要です。
当施設は、国からの支援はなく、一般の個人、企業、民間の財団等からの寄付のみで運営していることから、
高度医療の提供ではなく、他施設とのより密接な連携に努めているところです。
高度医療はできなくても、24時間医療者がいて家族が生活ができる当施設の必要性を広めていく必要があると感じています。
活動を続けていて、一番嬉しかった出来事は何でしょうか?
終末期、当施設に数か月滞在されていたお母さんがお子さんを亡くされた翌日に、「ここ(チャイルド・ケモ・ハウス)があるというのはすごいことなんですよ。
ここがなければ最後にこんなに家族で過ごすことはできなかった。」と、涙を流しながら言ってくださいました。
「きょうだいと一緒にお風呂ではしゃげたのも、ここがあったから」と言ってくださいました。
チャイルド・ケモ・ハウスが目指したあたりまえの日常…「家族一緒に寝ることができる、お風呂にゆっくり入ることができる、手作りの料理を作ってあげることができる…」
そのことがこのご家族の大切な時間につながっていたと思うと心から施設が完成してよかったと思いました。
活動を続けていて、悲しかった出来事はありますか?
管理面を重視するあまり、ご家族に我慢をさせしまったことが悲しかったです。
活動に携わる一人の人として、今後の目標を教えてください。
寄付をいただいて運営しているために、成果や実績をお伝えしなければと肩に力が入ることも多いのですが、
目の前におられるお子さんとご家族が何を求めているのか、
何を大切にしたいのかを、いつも中心において活動することを改めて目標にしたいと思います。
またそのことについて、ご寄付いただいた方々に伝えることができるように努力したいと考えています。
団体としての今後のビジョンをぜひ教えてください。
活動をはじめた当初、当施設のような医療者が常駐している滞在施設は全国になかったのですが、現在、子どもホスピスが新しくできたり、
既存のファミリーハウスに医療者の関わりが増えたりと「病院と家の中間」の役割を果たすところが増えてきたと感じています。
小児がんや難病の医療の中で、これらの施設が必要なものと位置づけられ、持続可能な活動ができるようにしていきたいと考えています。
定期的に開催しているイベントやワークショップなどがあれば、教えてください。
2021年8月からファミリーサポート事業を開始しました。ハウス内に「ファミリースペース」を設置し下記のような活動を常時実施しています。
・ご寄付でいただいた食材や必要物品の提供
・家族への相談支援
・患児およびきょうだいへのあそび、まなびの支援
・生活面のサポート(買い物、食事提供等)
対象者:チャイルド・ケモ・ハウス滞在者および退居後の方
最後に、エネルギーファンディング®︎に期待することを教えてください!
小児がんや難病は確率的には低いかもしれませんが誰がなってもおかしくない病気です。
私自身、息子が小児がんになるまではどこか他人事のように思っていました。
告知を受けたときにも信じることができず、受け入れられませんでした。ただただ今まであたりまえだと思っていた日常がこんなにかけがえのないものなんだと、
戻れることなら戻りたいと、夜に病棟から見える家々の灯りを見ながらずっと思っていました。
このエネルギーファンディングをとおして、たくさんの方々が少しでも今闘病しているお子さんと支えているご家族に想いを寄せてくださり、
闘病中でも日常に近い生活を送ることを応援していただけるならこんなに嬉しいことはありません。
エネルギーファンディングのご寄付と共に、チャイルド・ケモ・ハウスでお子さんとご家族におうちのように過ごしてもらえるよう私たちもがんばりたいと思っています!
「チャイルド・ケモ・ハウス」は、小児がん・難治性小児疾患のお子さんや、15~30歳の若年成人が、家族とともに滞在できるハウスであり、皆様のご支援を頂きながら、公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金が運営しています。